一期一会 地球旅143「地球の歴史を見に行こう グランドキャニオンに遊ぶ(4)」

一期一会 地球旅 143

地球の歴史を見に行こう グランドキャニオンに遊ぶ(4)

サウスリムの東端デザートビュー(Desert View)ではコロラド川と大峡谷の壮大な眺めに目を細め、どこまでも続く荒野が広がっていることを実感した。それすらも大西部のほんの一部でしかないことを思うとスケールの大きさにただただ驚くだけであった。アメリカ有数のこの大河は、遠くから見るとほとんど小さな流れでしかないが、実際には川幅は数十メートルあり、激流が岩を噛み、何百万年もの間、一時の休みもなく今も大地を削り続けているという。気が遠くなるような長い地球の歴史の一部を間近に見ることが恐れ多いことのように思える。こうして、再びサウスリムの中央部、ヴィレッジまで戻り、Bright Angel Lodgeの前でバスを返した。この日の午後から明日にかけての自由行動は思い思いに過ごすことになっており、大方の足はShuttle Busを利用することなる。午後は、サウスリムの西側一帯を回り、Hermit Restまで行ってくることになっていた。こちらは、東側とはまた違った風景が広がっており、東側とは別の趣に新たな発見がたくさんあった。

Shuttleに乗る前に、Bright Angel Lodgeで一休みすることにした。お手洗いと休憩、そしてこのあたり一帯の絶景を楽しんでいただき、滞在中にこの一帯では様々なアトラクションがあり、それらの下見も兼ねていた。ロッジ内には大きなレストランがあり、それは昨夜、到着早々に夕食で訪れている。このあたりは昨夜すでに訪れているが夜と昼では大違いであった。ヴィレッジはサウスリムの中心部、観光客が一番多く集まっている場所でもある。広い駐車場の向こう側には線路があり、ここまで来ているグランドキャニオン鉄道の駅がある。昼過ぎには、ウィリアムスからの列車が着くのでツアー客がたくさん到着するであろう。メンバーの中には鉄道というと目を輝かせて俄かに撮り鉄を発揮するYさんがいる。後で写真を撮りに来るのだと今から期待に胸を躍らせている様子。ロッジの広いロビーの奥には、ツアーデスクやカフェ、大きな土産物店があり、このあたりのネイティヴ(先住民)の人たちの手になる工芸品や絵画、アクセサリー、テーブルクロス、そして山ほどのTシャツが置いてあり、格好のお土産である。メンバーは目を輝かせてみていた。自由時間がたっぷりあるので、あとでゆっくり来ていただく趣向。

1ロビーを抜けて北側の出口を出るとリム(谷の縁)に沿って遊歩道が伸びており、緩やかなスロープになっているがコンクリートの道はよく整備されており、歩行不自由な人や車いす使用の人たちもゆっくり遊覧を楽しむことができる。谷に面した崖っぷちには厚さ20~30cm、高さは大人の腰くらいであろうか頑丈なコンクリートの柵が設けてあり、それから崖側には絶対に出ないようにと注意書きがある。うっかり出ると数百メートルも転げ落ちるかもしれない! 崖には、灌木や萱のような草、小さな花などが咲いており、リスが遊んでいる。鳥やリスなど野生の動物にはエサを与えないようにとこれも注意書きがある。人懐っこいリスは愛敬者、観光客のマスコットであり、格好のモデルでもある。ここからの景色は、メイサーポイントやデザートビューとはまた一味も二味も違う雄大さがある。圧巻は、はるか谷を下りた、それでも中腹部分に広いテラスがあり、一本の道が伸びている。2Bright Angel Trailというトレッキング路である。ヴィレッジから下りて行き、谷底に至るとコロラド川の上に架けられた吊り橋(Bright Angel Suspension Bridge)があり、激流が岩を噛んでいるそうだ。その橋を渡り、北側に至るとファントムレンチ(Phantom Ranch)という谷底のリゾートがある。多分、ここで一泊するのだろう。そして、翌日、ノース・カイバブトレイルを上っていくとお昼過ぎにはノースリムの崖の上に立てるらしい。

3 ノースリムまでは直線で20㎞くらい離れているらしいが、歩いていくと深さ1600mの谷底経由で1泊2日、車でならば、今朝行ってきたデザートビューを経てペインテッド・デザートなどを通ってノースリムまで360㎞余りだとのこと。朝出発すると夕方やっと向こう側に着くそうで、何ともスケールの大きい風景である。海抜高度は北側の方が更に100~200m高く、海抜2400mくらいあるそうで、冬は閉鎖されているとのこと。一度は谷底まで下りて向こう側まで行ってみたいと思いつつ、いまだに願いはかなっていない。そんな思いを巡らせながら、30分ほど過ぎてメンバーが集まって来られたので、Bright Angel の絶景をバックに記念写真。みんなの明るい笑顔を見ると長年の想いが叶えられ、こうして喜んでいただけることにしばし、深い感慨を覚える。

やがて、Hermit Rest行のShuttleがきた。昨晩、すでに乗っているので乗り方もスムーズ、ドライバーは運転席に座っていて、スイッチを押すとタラップが下ろされて自助または介助して車いすの乗客が乗り込み、所定の場所でブレーキをかけて、安全ベルトで結んで固定する。ブレーキの掛け方が不十分であるとか、ベルトの掛け方がゆるいと不安定であり、事故に至ることもある。利用する以上は利用者側にもそれなりの責任が求められるので知っておかなければならない。日本とアメリカの違いで感じることは、例えばプールがある。日本では一般的に利用上の注意としてやってはいけないことが箇条書きにされていたり、とくに公立の施設などでは口頭でもアナウンスが繰り返されることが多い。一方、米国では、プールの深さ、プール際は滑りやすい、あるいはSafe Guard(監視員)などはいないことなどが書かれていて、それを承知の上で利用していただきたい、それを守らずに事故が起きた場合は、管理者側は責任を持たない、いわば利用者責任(At your own risk)となることが明記されている。表現の違いであるが、個人的には米国側の表現の方が理解しやすいと感じている。そんなことを考えながら、車いすをしっかり固定していただけたことを確認、バスはゆっくり動き出した。路線バスであっても遊覧と移動を目的にしているので、ドライバーは周りの景色を紹介しながら、バスルートと停車場所などを丁寧にゆっくり説明する。何しろ、世界中からの来園者が乗っているので、分かりやすく、ユーモアを交えて説明してくれるのが嬉しい。

4一行は、ホピポイントで一度下車した。出発したヴィレッジからかなり高度が上がっており、サウスリム中央部一帯の見晴らしがよく、ルートが大きく張り出しており、ちょうど岬の突端のような位置にある。5 はるかに大峡谷有数の雄大な絶景を目の前にすることができる。ただ、岬の突端部分にあたる展望台までは十メートルくらいの石ころ道があり、加えてかなりの傾斜がある。屈強なスタッフが交替でMさんを介助、みんなの笑顔が一層明るくなった。遥か眼下にはコロラド川が蛇行して流れているが川面までは直線距離で5kmほどあるらしい。6川幅は数十メートルあるそうだがここからは小川ほどにしか見えない。ホピポイントから眺める悠久の大地は、真昼の陽の光を受けて白っぽく目の続く限り広がっていた。ここで小休止して、今度は石ころの坂道を慎重に戻り、次に来たシャトルバスで終点のハーミットレストへ向かった。   (以下次号とさせていただきます。)

 

(資料 上から順に、ことわりなし以外の写真は2015年9月撮影)

◎  Bright Angel Lodge のテラスからはるかにノースリムを望む。同名のトレイルは、右下の三角の大地の真ん中を通っている。

◎  Bright Angel Trailは急峻な九十九折りの道から始まっているらしい。(資料借用)

◎  Bright Angel Lodgeのテラスにて。

◎  Hopi Point 突端へ続く悪路ではスタッフが実力を発揮されました。

◎  Mさん母娘の笑顔が明るかった。左側、かすかにコロラド川の流れ。

◎  たくましいスタッフから私も力をいただきました。

(2017/1/24)

小 野  鎭