2017.08.03 小野 鎭
一期一会 地球旅169 地球の歴史を見に行こう リンデンハウス 南三陸へ(1)

一期一会 地球旅 169

リンデンハウス 秋の東北へ 南三陸へ(1)

大川小学校の悲劇は、伊南誘導の在り方などを巡って裁判となり、犠牲となった児童などの家族へ宮城県と石巻市は損害賠償金の支払いを命じられることにより決着したと報じられている。しかしながら、家族などからは、裁判では学校側の避難誘導に関わった教職員など関係者の動きなど詳細については明らかにされることなく今日に至っており、納得がいかないままになっているとも聞く。東日本大震災では失われた人命とその避難誘導の在り方などを巡って他にもいくつか裁判があったと聞いている。未曽有の自然災害による尊い人命の損失であり、避難誘導や安全管理のむつかしさがそれぞれに問われているのであろう。
大川小学校跡や門脇小学校跡始め、被災地に残っている建物などを震災の遺構として保存することが検討され、すでにそのための工事が行われているところもあると聞く。被災された方々の中には、見るのもつらいから保存することはやめてほしい、あるいは長く後世に語り続けていくためにも残すべきという意見など賛否両論で議論されている自治体もある。様々な意見があるのは当然であろう。 かつては広島の原爆ドームも類似の経過をたどり、今は、「広島平和記念碑」として世界文化遺産に登録されている。核兵器の恐怖を伝える「負の遺産」としても紹介されている。 和歌山県広川町には、「稲むらの火」で難を免れた地があることで知られている。主人公、濱口儀兵衛の偉業は災害に際して迅速な避難に貢献したことばかりではなく、被災後も将来再び同様の災害が起こることを慮り、私財を投じて防潮堤を築造した点にもある。これにより町の中心部では、昭和になって起きた二度の大地震による津波に際して被害を免れたとある。日本列島に住んでいる以上これからも震災や風水害始め様々な自然災害の発生は避けて通れないであろう、従って、そこに今次の様々な経験や学習効果が活かされることを願うのみである。
この夏、アート×音楽×食で彩る新しいお祭りを東北に、というコンセプトで石巻中心市街地と牡鹿半島で「Reborn–Art Festival」が開かれている。国内外の現代アーティストたちの作り上げた作品が地元の方々の協力のもと展示され、さまざまなスタイルの音楽イベントが開催され、さらには、石巻を含む東北のシェフのみならず、国内外の有名シェフたちによる地元の食材を使ったここでしか味わえない食事をいただくことができます。今、生まれ変わろうとしている東北だからこそ、他では出会うことのない価値観や人に出会うことができる。今まで出会うことのなかった自分にさえ、出会うことができるかもしれない。「Reborn-Art」とは、東北の再生を指すだけでなく、参加する人それぞれの「Reborn」を願うお祭りです。(Reborn-Art Festival 開催概要より) この催しは、7月22日から9月10日まで51日間、常設展示のほか、毎日、各所でさまざまな催しが行われておりきっと賑わっていることだろう。復興へ向けて歩いているこれらの地域がますます元気であってほしいと願うことしきりである。
新北上大橋の上からは震災で傷んだところを修復しているのであろう大規模な護岸工事が行われていている様子が見えた。その向こうには波静かな河口が追波湾へと続き、やわらかな秋の陽射しを受けて明るく広がっていた。車中、ガイドの説明はさらに沿岸風景から南三陸へと続いていった。それを聞くメンバーの顔は必ずしも明るいものではなかった。先ほど見学した小学校跡地の無残な姿と多くの人命を飲み込んだ津波の途方もない大きな力とそれがもたらした甚大な被害の様子などを目の当たりにしたショックが大きく、複雑な思いであったのだろう。旅の思い出は明るく楽しいものであってほしいとはいつも思うことであるが、今回のような経験をすることで彼らの人間的な幅がまたひとつ広まったであろうし、それ自体が貴重なことであったと思う。
南三陸町志津川地区はアルファベットの「C」の字のように半円形に広がった同名の湾に面しており、岸辺のちょうど中ほど、斜面の中腹部分にホテルがある。今夜一泊する南三陸ホテル観洋は、この地域随一の大型リゾート宿泊施設であり、240室余、宿泊定員1300名と紹介されている。広いロビーには先着のグループもいくつかあり、盛況ぶりがうかがえた。
私たちのグループは女性陣2室、男性1室の部屋が準備されており、いずれも湾に面してゆったりした造り、窓からは波静かな志津川湾が一面に広がっていた。海面には、海苔養殖のいかだであろうか、幾何学模様のようにきれいに並び、空を見ると夕日浴びた美しい雲が幾重にも棚引いていた。 (以下、次号とさせていただきます) (資料、上から順に、ことわりの無いもの以外はいずれも2016年10月16日撮影) 無残な姿を残している大川小学校 Reborn-Art Festivalのロゴ(資料借用) 新北上大橋近くの大規模の護岸工事 南三陸ホテル観洋(資料借用) 夕雲に照り映える志津川湾   (2017/08/01) 小 野  鎭