2022.02.14 小野 鎭
一期一会 地球旅 208 ユニバーサルツーリズムの普及を目指して(6)

一期一会 地球旅(208) ユニバーサルツーリズムの普及を目指して(6)

 交通手段だけでなく、民間の建造物や公共機関などもUDを意識したバリアフリー化が大きく進められていることは自分自身が高齢化するとともにこれまで以上に強く感じている。バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)は、我が国の公共交通機関や建造物等のバリアフリー化を進めていくうえで基本的な法律であり、それによりバリアフリーは一層強く推進されてきたと考える。令和2年の改正バリアフリー法の基本方針の一例を挙げれば、交通機関の車両等では車いすスペースを確保し、一般利用者には車いす等の利用者等に対してそのスペースを譲ることなども呼びかけることになっている。言うところの「心のバリアフリー」である。建物等のハード面の整備が進められるのと並行して人的サービス等ソフト面の充実がさらに求められている典型的な例ではないだろうか。交通事業者等は自社の考えだけでなく法律等の定めるところにも準拠してこれからもなお一層サービス改善が求められている。
昨年(令和3年)障害者差別禁止法が改正され、公的機関以外の民間機関(旅行関係あるいは観光・商業施設なども含まれる)などでも今まで以上に高齢者や障害者などへの合理的配慮(障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために、何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるもの。たとえば、入口などに段差がる場合に、スロープなどを使って補助することや、車いすを押してあげることなど)が求められる。
交通機関や宿泊機関などでも一層のバリアフリー化が求められるし、施設設備の整備だけなく、サービス面でこれを充実させ、整えることが旅行会社などにも求められることになる。まさに、ハード面の整備とソフト面の充実が具現化されており、自分が15,6年前から訴えてきた「ユニバーサルツーリズム普及のために」として挙げてきた『車の両輪』がずいぶん広まってきていることを知るとほんとにうれしい。 利用者側は、様々な仕組みをいかに上手に利用していくか、が肝要であり、多分、利用の得手不得手は、スマホやSNSを上手に使っている人とそうではない人があるのと同じようなことがあるかもしれない。また、必要ではあっても自身では情報を得にくい人もあれば、実際に利用しきれていない人もあるだろう。それを使いこなすためには、旅行者本人はもとより、家族やまわりにいる人が有形無形で支援することが望ましい。人的支援するための費用が生ずることもある。その一つとして、第三者が、外出支援や介護旅行に於いて、介護保険など公的支援ではまかないきれないサービスを提供する例として、トラベルヘルパーなどがある。 旅行業や福祉系専門学校などでは、通常、2年間の授業年限であり、介護旅行などに対応できる人材を養成することは理論的または時間的にもむつかしいことは明確である。そこで、外出支援や介護旅行で活躍できる人材を養成する方法としては、①旅程管理などの資格を有する人、または、②介護経験や訪問介護員あるいは介護福祉士などの資格を有する人それぞれに旅行面と介助面の知識と技術から養成することが望ましいと考える。
介助支援や介護旅行は一般にそのような旅行商品が販売されているのではなく、人材提供であり、そのような旅行内容を整えることが必要である。つまり、前述の①と②の両面を熟知したコーディネーターがそれに該当すると考える。今では、介助を前面に打ち出した専門業者もあるが多くは、小規模であり、一般には、地域密着型かもしれない。密度の濃いサービスを提供することは至難の業であるということではあるまいか。JTBやHISなどの大手旅行会社ではそれほど多くの手を要しない介護旅行にあたるサービスは行っておられると聞いている。しかしながら、もっと多くの介助を要する外出支援や介護者を必要とされる場合は、専門会社にトラベルヘルパー(外出支援専門員)等の派遣を求められることが多いという所以かもしれない。 (写真/イラスト等 上から順に) 「内閣府 リーフレット」借用 UT普及へ向けて(小野) トラベルヘルパー(日本トラベルヘルパー協会提供)